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潰瘍性大腸炎について

うんちわー、日本うんこ学会会長で医師の石井です。
今回は私自身の持病でもあり最も思い入れの深い大腸の病気「潰瘍性大腸炎」についてです。
最後に僕からのメッセージもつけているので、良かったら最後まで読んでみてください。

潰瘍性大腸炎とはどういう病気なの?

 

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜(一番内側の膜)に炎症を起こし、びらんや潰瘍ができる大腸の病気です。病変は直腸(肛門に近い腸)から連続的に口側に広がっていく性質があり結腸全体に拡がることもあります。

特徴的な症状としては、下血や下痢や軟便で、炎症の範囲が広がってくると、腹痛や発熱も起こします。自分の免疫が自分の腸粘膜を攻撃してしまい炎症を起こすと言われていますが、まだ原因がはっきり分からないため、完治する治療法も見つかっていない疾患で、国が定める指定難病にもなっています。

1980年以降に急増しており、日本では16万人以上の患者さんがいるとされ、指定難病の中では患者数が一番多い疾患です。30歳以下の比較的若い世代に初めて発症することが多いのですが、小児や年配でなる方も一定数います。更に詳しい調査等は難病情報センターのサイトもご参照ください(https://www.nanbyou.or.jp/entry/62

 

潰瘍性大腸炎の治療法と付き合い方

 

この病気の最大の特徴は寛解期(調子が良い時)と活動期(悪化している時)を繰り返すことです。たとえ治療を行っていても、節制をしていても、調子が急激に悪くなってしまうことはありえるのです。

現在、潰瘍性大腸炎を完治に導く内科的治療はありませんが、炎症を抑える有効な薬物療法がこの10年程で進歩し、今では多数存在しているため、寛解期を長期的に維持出来る可能性は高くなっています。すぐ命にかかわる病気ということではなく、定期的な検査や治療は必要になりますが、寛解期であれば仕事や家庭生活も普段通り過ごす事が可能です。もちろん会食も可能です。

悪化時にも今は様々な治療の選択肢があり、入院等の治療をせずに十分病気と付き合う方法を見つけられる可能性もあります。また、女性の患者さんは妊娠や出産も可能です。

就業の際に不利益になることもなく、首相だけでなくスポーツ選手やタレントに外科医と様々な職業で潰瘍性大腸炎の患者さんが活躍をされています。管理職等も多数存在しており、病気があるからといって就業に制限をかける必要は全くありません。

 

最後の手段として大腸全摘出がある

どうしても内科的な治療が効果がない場合もあったり、増悪時に大出血をしたり、癌を発症する等、命に関わるような状況になってしまうことがあります。その場合には大腸を全摘出する手術をします。大腸を全摘出した後はかつては人工肛門になることが必須だったのですが、回腸嚢肛門管吻合術という特殊な手術方法で、小腸をJの字に加工して肛門につなぐことで、これまで通り肛門から排便出来る状態を取り戻すことが出来るようになります。

体調悪いなら手術したらいいのではという意見があるかも知れませんが、内科治療がとても進歩してきたことで、ギリギリまでは内科的にコントロール出来るようになっています。一定数合併症や術後の機能障害等の危険性もあるため、どうしても出来ない場合の最終手段となります。

 

潰瘍性大腸炎を疑う症状をチェックしましょう

下痢とともに血が混じった便がよく出ている方で以下の症状を伴う場合には検査をしてもらいましょう!

  • 1日に何度も便意をもよおしトイレへいく
  • 発熱がある
  • お腹の痛みが長く続く
  • 吐き気や嘔吐する時がある
  • お腹が張っている
  • 体重が最近減ってきたといった

さいごに・・・

筆者であるわたし石井も、15歳で潰瘍性大腸炎を発症し、19歳で大腸全摘出を行いました。
一時期は死を意識する程に落ち込み、辛い時期もありましたが、今は医師として多くの患者さんと向き合える程に回復しました。


病気は誰の身にも降りかかる可能性があります。難病があるからと言って就業制限があったり、会食に行くことを怒られるようなことがあってはいけないと思っています。私自身、この病気になった際に、「控えるべき食事リスト」を渡されました。今思えば状態が悪い時に控えて欲しいということだったと思うのですが、当時は情報も少なく言われるがまま、厳格に控えていたところ、食べられるものがほとんどなくなってしまいました。放課後に友人達とファミレスに立ち寄ろうとした時も「自分は食べられるものがないから」と自粛しているうちに、学校からも足が遠ざかってしまった経験があります。ストレスも厳禁と言われたので、勉強することも控えていました。

食事制限を厳格に行うことは病気のことだけを考えれば正しいのですが、人生に悪影響を与えてまで行うことは本末転倒ではないでしょうか。潰瘍性大腸炎をはじめ一生涯付き合う可能性のある病気はあります。病気が人生の中心にはならず、病気があっても自分の人生を楽しむことへの障害にはならないで欲しいと願っています。

 

話者 石井 洋介
日本うんこ学会会長、おうちの診療所目黒・秋葉原内科saveクリニック共同代表医師
消化器外科医→厚生労働省医系技官を経て日本うんこ学会会長へ。
コミュニケーションデザインとデジタルヘルスの力で医療をもっとよくしたいと思ってます。


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