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過敏性腸症候群(IBS)の基礎知識

うんちわー、日本うんこ学会会長で医師の石井です。
今回は下痢と便秘両方になる可能性がある過敏性腸症候群についてお話したいと思います!
健康診断等では何も指摘されてない健康体だけど、うんこの調子やお腹の張りだけ気になっている方は要チェックです。

過敏性腸症候群とは?

過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)は機能性消化管疾患とも言われ、大腸に炎症を起こす等の病変がないにも関わらず、大腸の機能が異常を起こしてしまう病気のことです。
慢性的なストレス等による自律神経系のトラブルであると言われています。

「大事な仕事の前にはいつもお腹を壊すんだよなー」
というようなことがよくある方はもしかするとIBSかも知れません。

下痢を起こすだけでなく、逆にストレス等により大腸の動きが悪くなり便秘になってしまうかたや、下痢と便秘を反復する混合型、お腹に違和感を感じるだけの方等もいます。

過敏性腸症候群の診断基準

過敏性腸症候群の世界的な診断基準にRomeⅣと呼ばれる世界的な診断基準があるので紹介します。

最近3ヶ月間、月に4日以上腹痛が繰り返し起こり、次の項目の2つ以上があること。

  1. 排便と症状が関連する
  2. 排便頻度の変化を伴う
  3. 便性状の変化を伴う

期間としては6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月間は上記基準をみたすこと。

過敏性腸症候群の症状は腹痛あるいは腹部不快感とそれに関連した便秘や下痢があることです
特徴として症状はうんこをすることで痛みや不快感が取れることです。
うんこをしてもお腹の痛みが続く場合などは炎症などの疾患が隠れている可能性がありますので、それはそれで注意が必要です。

また社会心理的ストレスで増悪するのが特徴とされます。
ただ、僕が診てきた患者さんの中には自分でストレス源に気がついていないこともありました。
よくよく聞いてみると、
「職場の席の近くの上司の声がでかくて、ストレスではないけど不快には感じていた」人が、席替えにより改善した事もありました。
「実は婚約を6ヶ月前にして、ストレスはなく、嬉しく思ってはいるけど
その頃から調子が悪い」というような慶び事をきっかけにしていることもありました。

下痢や便秘が続いているだけで病院に行くのはちょっと・・・と思うかも知れません。
確かに命に関わる病気ではないのですが、これまで診察した患者さんの中には明らかに仕事のパフォーマンス低下につながっている方もいました。

僕自身が下痢型のIBSに近い症状を持っていたので、自分にあったことを患者さんに伝えると「あるある」と非常に納得をしてくれます。
例えば、

  •  新幹線や映画館の座席は通路側が好き、飲み会は常に末席
  •  10分以上トイレがない状態にさらされるのは恐怖
  •  トイレのことを考えると不安で旅行に行きたくなくなる
  •  お店に入ると無意識のうちにトイレの場所と個数を把握している

そんな恐怖心や不安感があるようであれば、実は仕事や生活に支障を来しているのではないでしょうか。
しっかりと内服治療
や生活指導受けることで、うんこによる恐怖支配から解放される可能性があります。

過敏性腸症候群の治療方法

IBSと診断がついた方には、コロネル(ポリカルボフィルカルシウム)、イリボー(ラモセトロン塩酸塩)等のIBSに効果があるとされている薬が処方されます。
処方だけでなく、ストレスの原因を突き止め、心療内科的なアプローチや認知行動療法を使った治療を行ってくれる先生もいます。

また、食事等の生活改善による方法も効果が示されているものがあります。
代表的なものに、

  • 油っこいもの、アルコール、香辛料などの刺激物の摂食回避
  • 低FODMAP食を実践

があります。

FODMAPとは、

  • F(Fermentable):発酵性
  • O(Oligosaccharides):オリゴ糖
  • D(Disaccharides):二糖類
  • M (Monosaccharides):単糖類
  • P (Polyols):ポリオール(多価アルコール、糖アルコール)

の頭文字を取ったもので、お腹の中で発酵してしまい、ガス貯留や下痢の原因になると言われています。
ただしFODMAPは多くの食品が該当するため、全てを実践するのはとても大変です。
まずは、原因になりそうな物をやめてもらうことをオススメします。

例えば、ヨーグルトや蜂蜜等お腹に良い言われる食べ物も該当しています。腸に良かれと思って積極的に食べていたものが害になっているケースもあります。
お腹に優しいと言われるような食べ物の多くが慢性便秘症に対しての話であることが多く、IBSには害になってしまうことがあります。

また、下痢型の方で小麦不耐症、乳糖不耐症が隠れている場合もありました。
乳糖の分解酵素は年齢を重ねると弱くなってしまうため、若い頃には飲めた牛乳も年を取って飲めなくなった等よく聞きます。

この場合には小麦製品や乳製品をやめてもらうだけでも効果が出る場合があります。
ちなみに乳糖不耐症とは、乳頭を分解する酵素を持っていない方が起きる状態で、アレルギー反応とは少し違います。
一方でアレルギー反応でも下痢を起こしてしまう方もいますので、両者を鑑別して治療する必要があります。(使用する薬が違う)

 

話者 石井 洋介
日本うんこ学会会長、おうちの診療所目黒・秋葉原内科saveクリニック共同代表医師
消化器外科医→厚生労働省医系技官を経て日本うんこ学会会長へ。
コミュニケーションデザインとデジタルヘルスの力で医療をもっとよくしたいと思ってます。


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