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便秘の治療法<ガチ処方編>

うんちわー、日本うんこ学会会長で医師の石井です。

前回、便秘の基礎的な話をしました(参照)。
便秘はとても日常的なもなので、「便秘で病院を受診するなんて!」と自分で解決しようと試行錯誤している方が多いかも知れません。
我々医師の間でも便秘情報はアップデートされており、最新の治療方法が確立されてきています。

2017年には「慢性便秘症診療ガイドライン」という慢性便秘に対する治療ガイドラインが発表されました。
まずは「便秘ってどういう状態?」という定義からみてみましょう。

 

以下の6項目のうち、2項目以上を満たす。

  1. 排便の4分の1超の頻度で、強くいきむ必要がある
  2. 排便の4分の1超の頻度で、兎糞状便または硬便(ブリストルスケールでタイプ1or2)
  3. 排便の4分の1超の頻度で、残便感を感じる
  4. 排便の4分の1超の頻度で、直腸肛門の閉塞感や排便困難感がある
  5. 排便の4分の1超の頻度で、用手的な排便解除が必要である(摘便・会陰部圧迫など)
  6. 自発的な排便回数が週に3回未満である

「慢性」の診断基準

6カ月以上前から症状があり、最近3カ月間は上記の基準を満たしていること。

 

便秘=便の回数が少ないと考えてしまいがちですが、
排便の回数が少ないだけが便秘の診断ではないというがポイントですね。
毎日出てはいるけど、硬くてコロコロの便でなかなかうまく出てこないと悩んでいるあなたは立派な便秘症なのです。

診断基準の中にブリストルスケールという記載がありますが、これは自分の排便を記録するにあたり、定量的に記録をするための基準を定めたものです。

 

7段階で以下のようなスケールで記載をしていきます。便秘かなと思ったら、一度このブリストルスケールで記録を取ってみることをおすすめします。

日本うんこ学会オリジナルブリストルスケール表です。
画像を印刷してトイレに貼ったり、便秘で困っている人に渡してあげて下さい!(PDF版

 

 

 さて次に、この便秘症に対してどのように治療を行っていくのかをガイドラインから一部抜粋させてもらいます。「たかが便秘」と侮るなかれ、こんなに沢山の治療薬が存在しており、僕らはこれらの組み合わせで便秘を改善させていくのです。

内科薬で代表的なものは以下の通り。

分類 エビデンスレベル 薬剤名 用法・容量 特徴・注意点
プロバイオティクス B 酪酸菌製剤(ミヤBM製剤) 1回1包(1g)、1日3回 抗菌薬と併用可能
ビフィズス菌製剤散(ラックビー微粒N) 1回1包(1g)、1日3回 抗菌薬と併用時はR製剤を使用
膨張性下剤 C ポリカルボフィルカルシウム(コロネル) 1回500〜1000mg、1日3回 IBSの便通異常に保険適応あり
浸透圧性下剤 A 塩類下剤:酸化マグネシウム(マグミット) 1回250〜500mg、1日3回 高Mg血症に注意する
糖類下剤:ラクツロース(モニラック)   慢性便秘症に保険適応なし、腎機能障害・小児等に利用
刺激性下剤 B センノシド(プルゼニド) 1回12〜24、最大48mg、1日1回 即効性は1番あるが、長期運用により耐性が出現し難治性になる
ビコスルフォナトリウム(ラキソベロン) 1回10〜15滴、1日1回
上皮機能変容薬 A ルピプロストン(アミティーザ) 1回24μg、1日2回 妊婦には投与禁忌、高コスト
消化器官運動賦活薬 A モサブリド(ガスモチン) 1回5mg、1日3回 慢性便秘症に保険適応なし
漢方薬 C 麻子仁丸 添付文章量を1日3回食前 刺激性
大黄甘草湯 甘草による電解質異常に注意
大建中湯 手術後のイレウス予防にも利用される

(慢性便秘症診療ガイドラインより一部改変)

ガイドライン上では、まず第一選択として、浸透圧性下剤か上皮機能変容薬の使用を勧めています。

具体的な商品名で言えば、酸化マグネシウムやアミティーザというお薬です。これらの薬を基本に、それでも出ない日にはセンノシド等の刺激性便秘薬を使用するように記載されています。

ペアン
あの、私も便秘なのですが、市販の下剤等を使っていても問題ないですか?

 

そっか、ペアンちゃんも便秘なんだね。一度診察しようか。

市販の便秘薬(〇〇茶のような健康食品も含めて)の多くは刺激性下剤がはいっていることが多いです。
早く効いて効果も高いため、この刺激性便秘薬を含むものが多いのです。とても効き目がいいので使いやすいのですが、一点問題点があります。この刺激性便秘薬は使い続けると耐性が出来てしまい、徐々に効き目が弱くなってしまうのです。

僕が医師として現場で経験した驚きエピソードを御紹介します。
大企業に所属されている多忙なキャリアウーマンが便秘を主訴に来院されました。
病院に行く時間がなく、センノシドを含む市販の便秘薬を自分で購入して飲んでいたのですが、市販薬を飲む量が少しずつ増えてしまい、最終的には
1回で市販薬を1箱全て飲まないと便が出なくなってしまったということで来院されました。
刺激性便秘薬は飲み続けていると効かなくなっていくため、次第に大量摂取しないと排便出来なくなってしまうようなことが起こり得ます。彼女の便秘は、おそらく腸を動かす刺激性の薬よりも、排便中の水分量を増やす薬が必要と判断し、便を柔らかくする薬を中心に処方をしたところ、市販薬を使用せずに快便になることが出来ました。

石井の日常診療でも数種類の薬を組み合わせることで、刺激性便秘薬を可能な限り使わなくていい状態を維持出来るように処方するよう心がけています。

「たかが便秘」と侮らず、もし市販薬等を利用しても良くならない場合には気軽に受診してください。

 

話者 石井 洋介
日本うんこ学会会長、おうちの診療所目黒・秋葉原内科saveクリニック共同代表医師
消化器外科医→厚生労働省医系技官を経て日本うんこ学会会長へ。
コミュニケーションデザインとデジタルヘルスの力で医療をもっとよくしたいと思ってます。


便秘の基礎知識

薬剤性便秘症について

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