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大腸がんのことを知って欲しい

うんちはー、日本うんこ学会会長の石井です。

本日のテーマは大腸がんの基礎知識です。実際に大腸がんになってしまった後の治療方法等については、がんセンターのサイト等が詳しく書かれているのでご参照下さい。

 

大腸がん患者は増えている?

大腸がん患者の数は、この30年でおよそ5倍に増え2018年の国立がんセンターの統計によると、患者数が多い癌(男性3位、女性2位、総合1位)、死亡数が多い癌(男性:3位、女性1位、総合2位)と患者数・死亡者数ともに最上位の癌となっています。

増えてきた背景に食生活やライフスタイルの欧米化があると言われて久しいですが、最も直接的な原因は高齢化です。

高齢になれば大腸がんの罹患リスクは高まりますので、人口構造の高齢化により大腸がんの患者さんが激増してように見えるのですが、例えば20年前の人口構造に年齢を調整するような加工をすると微増程度になります。つまり、どうやら社会背景が大きく変わっているとか、癌が起こりやすい食品が売っているのではないかという陰謀論が大腸がん増加の理由ではなく、根本的には高齢者が増えていることが一番の増加理由となっています。

大腸がんの原因になるとされているものに、

  • 赤肉/加工肉等動物性タンパク質の過剰摂取
  • 喫煙・飲酒
  • 野菜や果物の摂取不足
  • 運動不足

があります。

生活習慣と直接的な因果を示すのは非常に難しいのですが、各種の大規模な研究でわかってきたことなので、そこそこ信頼度は高いです。

まとめると、禁煙して・飲酒を控え、野菜中心の食生活でしっかり運動を行うと、超一般的に「健康」と言われるストイックな生活を送ることが大腸がんの予防方法ということになります。予防出来るサプリメントや大腸がん予防水とかはまだ証明されていないので、話半分で聞くようにしてください。

健康的に生きること以外に予防がないということの裏を返せば、日常生活の改善で防ぐことはなかなか難しそうです。大腸がんを発生させない予防は難しいので、症状が出たら早期に病院に来てもらいたい、出来れば検診もたまには受けて欲しいというのが大腸がん死を沢山みてきた私の個人的な思いです。

大腸の構造

図1:大腸の部位

大腸は食べ物の通り道で言う終着点です。口→胃→十二指腸→小腸と通過してきて最後に大腸に入ります。基本的に大腸までの旅の途中で食べ物は完全に消化され、栄養も水分もほとんど吸収済みの状態で大腸に届きます。

大腸では主に水分を吸収したりして、最後にうんこの塩梅を調整する仕事をしています。長さは個人差ありますが約2mほどの臓器で、右下腹部から肛門に向かって、盲腸→上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸に分けられます(図1)

がんは大腸のどこの部位にも発生しますが、特にS状結腸~直腸に出来やすいと言われています。がんが出来た部分によって、手術方法や抗がん剤の使い方が変わるため、発生した部位によって、治療方針にも影響があります。

 

 

 

 

 

大腸がんの発生とステージ

がんは大腸の粘膜側(内側)から発生し少しずつ内外に大きくなっていきます。粘膜を堀るように深く癌が浸潤していくと表現されます。がんが深く大腸の外側に向かう途中には血管やリンパ管があります。進行していく中で、血管やリンパ管に癌が入り込むと、このワープルートを通って遠くの臓器に癌が転移をすることがあります。

大腸がんは大きさ(深さ:深達度)とリンパ節転移と遠隔転移の組合せでステージというものが決まります。0~4の5段階で表記されます。
他の臓器に転移を起こす遠隔転移があるとStageⅣという分類となります。血管やリンパ管に入り込む前の段階で早期に発見されたStageⅠやⅡでは5年生存率(手術後5年間生きている確率)が8割以上あるのに対して、StageⅣでは2割以下ととても低くなってしまいます。早期に治療出来る重要性がここからも分かると思います。

図2:大腸がんのステージと5年生存率

 

 

 

 

大腸がんの症状

大腸がんを出来れば早期に発見したいところですが、早期の段階では自覚症状はほとんどなく、大腸がん=Silent Killer(暗殺者)と呼ばれることがあります。少し進行してくると以下のような症状が出てくるので、特に覚えておいてください。

  • 血便が出る(便に血が混じる)
  • 下痢と便秘を繰り返す
  • 便が細くなる
  • 便が残る感じがする

上記の症状を見ても分かる通り、大腸がんが進行してきて出てくる症状の全てが「うんこ」に関係する症状です
大腸粘膜の内側、つまり「うんこ」の通り道に少しずつ大きくなっていくため、次第にうんこの通りが悪くなったり、癌をこすることで血がつく等の症状が出てきます。
更に癌が進行していくと、お腹にしこりを触れるようになったり、おなかが張り腹痛が起きたり、貧血や体重減少などが起こってきます。症状の大きさがステージと明確に一致する訳ではないのですが、進行すればするほど症状が強くなることは間違いないため、出来れば強い症状が出現する前に発見したいものです。

うんコレ内でカンベンヌ様が毎日の観便を推す理由を理解はここにあります。
毎日の排便状況から少しでも早く症状に気がつくことで早期に発見出来る可能性があります。普段から便を見たり、お腹の調子を気にする癖がないと、なかなか気がつけずに進行する可能性があるため、定期的に便を観察して、自分のお腹の声に耳を傾けてもらえると嬉しいです。

 

大腸がんの治療

ステージや部位によって様々なので専門家の先生に聞いていきましょう。
ざっくりですが、ステージ0や1では内視鏡治療(胃カメラ)だけで終わる可能性あり、それ以降は腹腔鏡か開腹による大腸の一部切除を伴う手術が必要となります。ステージ3を超えてくると更に抗がん剤や放射線治療なども組み合わされる可能性があります。
ステージが上がるほど治療の負担も上がっていきます。予後だけでなく、低侵襲で終わらせるためにも早期発見が望ましいと考えます。

大腸がんの治療は長きに渡り研究されてきました。
多くの天才外科医たちによって手術方法が考案されてきました。現在では過去のゴッドハンドたちが行ってきた手術方法が標準化されており、全国どこででも受けることが可能になっています。
「標準治療」と言われると普通の治療と思われるかも知れませんが、「最善治療」が全国に標準化されているという意味です。誤解のないように。

信頼出来る外科医の先生のもとで治療を受けてもらえれば、隣の病院では全然違う手術をしているということはありません。
僕から伝えたいこととしては、長年に渡り研究してきた大腸がん治療に裏技や、医師もしらない方法はありません。仮に病院での治療に納得がいかなく、他の治療方針を検討したとしても、是非、病院の標準治療はどこかで必ず受けて欲しいと思っています。並行して利用出来る治療も沢山あります。

 

大腸がん検診の話

うんこの症状は気が付きにくいため、毎日見たり感じやすくする工夫はしてもらいつつ、症状が出る前の段階で検査が出来る一番いいですよね。そこで登場するのが大腸がん検診です。主に便潜血検査と呼ばれる検便の検査が主流です。便の表面に付着した目に見えない程の血液を発見する検査です。日本では40歳以上の方は大腸がん検診受診を推奨されています。会社や自治体から案内がくると思いますので、よかったら是非受けてみてください。

また検診を受けて陽性(+)であった場合には必ず消化器内科を受診をするようにしてください。検診陽性だからといって癌があるという訳ではないのですが、陰性の人に比べて数倍は大腸がんである可能性が高い状態なので、必ず受診をお願いします!

 

参照)

ハルトマン
そしたら毎日検診したら絶対に予防出来るのだな?

 

ハルトマンちゃん、それがそういう訳でもないんです。
ある感染症が流行した際にPCR検査をむやみにやらない方がいいという話を聞いたことがある方も多いと思います。
むやみにやらない方がいい理由としては、

  • 検査の正確性が100%ではない
  • 有病者が少ないため、100%ではない検査をしまくると不利益を被る人が増える
  • 結果、全体の死亡率は変わらない割にお金だけかかるということになる

等ですが、詳しい話は他にも沢山落ちているため、専門家のわかりやすい話に譲ります。

簡単に説明すると、完全ではない検査を何度もしていると、いつかは大腸がんがないのに陽性になってしまう可能性があることは想像に難しくないと思います。
また検査のハズレ的中率が90%の検査だとすると、100人中1人の患者さんを発見するためには10名の疑い患者が生まれるため、1人の寿命を伸ばすために10名の方には不要な内視鏡検査を受けてもらったり、精神的苦痛を与える可能性があります。

これらのメリットデメリット等を勘案して、日本の政策では40歳をラインとして、それ以上の人には一部自治体の予算を使ってでも検査を受けてもらうことを推奨する方針になっています。アメリカでは45歳~75歳に推奨されているなど、国によってもこの辺の政策は違います。その国の医療提供体制や財源等様々な理由があるため、ここでは割愛します。全年齢全員に大腸がん検診を義務化して無料化しようみたいな政策を掲げる方もいらっしゃいますが、これらの政策のメリットはあまり意味がないだけでなく、害を受けてしまう人が増える可能性が高いという点は覚えておいてもらいたいと思います。

まとめ

今回はうんコレの理念でもある大腸がん早期発見に関わる文章だったので、めちゃくちゃ長くなってしまいました。また私自身の考えも沢山入ってしまっていて、客観的な医療情報提供としては微妙かも知れないのですが、意見も含めて参考にして頂ければ幸いです。

ポイントをまとめると、

  • 大腸がんは年齢とともにの発生率が上がり、40歳くらいからリスクが高まる
  • 生活習慣やサプリメントとかで予防出来る可能性は低い
  • 早期発見をすることで治療介入が早くなり、侵襲度の低い治療で治せる可能性が高い
  • 「標準治療」はこれまでの長い歴史の積み上げで出来た「最善治療」なので受けない手はない
  • 大腸がんの症状は「うんこ」に出てくることが多い、日々のうんこの出方をチェックしておくことが大事
  • 症状が出る前に発見しようと思うと検診を受けるしかない
  • ただし検診は完全ではないため、むやみに受けたりすすめるのはやめましょう

ポイントもとても長くなってしまいましたが、大腸がんのことを少しでも詳しくなってもらって、早期に発見される人がいたらコレほど嬉しいことはないです。
うんこ関係で困ったときにはお近くの「消化器内科」で相談してみてね。うんこ学会でも定期的に情報提供をしていますので、フォローミー!

日本うんこ学会公式TW

話者 石井 洋介 TW
日本うんこ学会会長、おうちの診療所目黒・秋葉原内科saveクリニック共同代表医師
消化器外科医→厚生労働省医系技官を経て日本うんこ学会会長へ。
コミュニケーションデザインとデジタルヘルスの力で医療をもっとよくしたいと思ってます。


薬剤性便秘症について

過敏性腸症候群(IBS)の基礎知識

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